人間と言えども地球に住む生き物の一種です。ですから、自然の影響を限りなく受けます。
特に日本の気候は春夏秋冬、季節によって大きく変化します。その中で生命を維持し活動してゆくのは、とても困難なことなのです。
でも、そう簡単に我々はギブアップしません。外界の変化に適応する能力をしっかり身に付けているからです。
これを恒常性維持と呼んでいますが、人間を含め多くの高等生物に備わった防衛機構です。ただ、その仕組みをフル活動させなければならない状態を長く続けることは、身体にとって大きな負担となります。
ですから東洋医学では、四季に応じた食物を摂るようにすすめています。例えば、暑い夏には身体を冷やす作用のある食物を摂るのが健康的ですし、又、寒い冬はその逆で温める作用のある食物を摂るのが良いのです。それだけで事足りるわけではありません。体質の考慮も必要です。
例えば、普段から暑がりの方でしたら、夏場は強く身体を冷やす性質のある食物を摂る必要がありますし、冷え性の方でしたら、少し身体を冷やす、あるいは、温めも冷やしもしない食品を摂るのがベストなのです。
このように体質がからむと、夏だからといって単に冷やす食品を摂れば良いというわけにはいかず、個々にあった冷やし加減が必要になるのです。これを、東洋医学的に一口で言いあらわすと、「寒熱」理論による体質別けをし、その個々の体質に適する食品を「五性」から選ぶ食事療法となります。「寒熱」は寒性体質、熱性体質、平性体質の3つに区分されています。
寒性体質は冷え性でそれに伴う様々な症状を訴える体質、又、熱性体質は暑がりでそれに伴う様々な症状を訴える体質、平性体質は冷え性でも暑がりでもない中庸の体質を指します。平性体質の多くは基本的に固定した症状はなく毎日健康に過ごしています。
「五性」とは身体を温めたり冷やしたりする作用を持つ食品の区分です。強く身体を温める食品を熱性食品、軽く身体を温める食品を温性食品、強く身体を冷やす食品を寒性食品、軽く身体を冷やす食品を涼性食品、身体を温めも冷やしもしない食品を平性食品と細かく分類しています。
この「五性」も「寒熱」理論の応用です。したがって、この「寒熱」や「五性」を活用すれば、上述したように個々の体質に合わせ四季の変化に応じた食事療法ができるのです。ただ、これだけで事足りるわけではありません。更に体質をつきつめると、寒熱体質だけではなく、臓器の弱りも取り上げなくてはならなくなります。
例えば、生まれつきある臓器が弱いタイプです。これを東洋医学では、「五臓」と呼び、生まれつきの、あるいは、病気等による5つの臓器の弱りを指します。内訳は、肝が弱る肝虚体質、心が弱る心虚体質、脾が弱る脾虚体質、肺が弱る肺虚体質、腎が弱る腎虚体質の5種類になります。
そして、それぞれの弱り体質を補うのは、順に酸味の食品、苦味の食品、甘味の食品、辛味の食品、鹹味(塩からい)の食品を摂ると良いのです。これを5つ味ですので「5味」に対応する食事療法と呼んでいます。
以上が基本的な東洋医学的食事療法です。少し煩雑ですので、整理しておきます。
寒熱
冷え性でそれに伴う症状を訴える体質、暑がりでそれに伴う症状を訴える体質、冷え性
でも暑がりでもなく基本的に毎日健康に過ごせる体質に区別され、それぞれ順に寒性体
質、熱性体質、平性体質と呼びます。
五性
寒熱理論による四季の変化や体質により選ばれる食品群です。熱性食品、温性食品、平
性食品、涼性食品、寒性食品に区分されます。
五臓
生まれつき、あるいは病気等によって、ある臓器が弱った体質です。弱った臓器の種類
から、肝の弱り体質を肝虚症体質、心の弱り体質を心虚症体質、脾の弱い体質脾虚症体
質、肺の弱い体質を肺虚症体質、腎の弱い体質を腎虚症体質と5つに分類しています。
五味
五臓に対応する食品です。つまり、肝虚症体質、心虚症体質、脾虚症体質、肺虚症体質
腎虚症体質に対応する食品です。それぞれを補う食品は順に酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩からい)となります。五つの味ですので五味と言います。
では、実際にどのような食品を四季に応じて食べれば良いのか、色々な体質別に紹介しましょう。まずは、表1、表2をご覧下さい。そして、ご自分がどの体質に当てはまるのかを確かめてください。
表1 寒熱
寒性体質 | 熱性体質 | 平性体質 |
寒がりで手足が冷えて、夏でも暖かいものを欲しがることが多々ある。又、顔色は青白く、多くはやせ型で下痢しやすい。 | 暑がりで汗が多く、冬でも冷たいものを欲しがることが多々ある。又、顔色は赤みがかり、多くは太り気味で便秘しやすい。 | 暑がりでも寒がりでもなく季節に応じた冷たいものや温かいものを欲しがる。多くは中肉中背の健康的なタイプ。 |
表2 五臓
肝虚症体質 | 心虚症体質 | 脾虚症体質 | 肺虚症体質 | 腎虚症体質 |
頭は小さく顔長。顔色は青白く身体は細くやせている。日頃、目や筋肉の疲れを訴える。感情の起伏が激しく、すぐに泣いたり怒ったりしやすい。多くは酸味を好むか全く嫌い。 | 頭は小さく、顔は前に尖った形をしている。顔色は赤みがかり、体格は良い方。日頃、舌が荒れやすく汗かきで、疲れると動悸を感じることが多い。楽しいことが好きでよく笑う。多くは苦い味も平気。 | 頭は大きく丸顔。顔色は黄色で身体の肉付きは良い。日頃、唇が荒れやすく、美味しいものを見るとすぐによだれがでてくる。性格は優しいので友達が多い。ただ、考えすぎることも多く、くよくよしやすい。多くは食欲旺盛で甘党。 | 頭は小さく角ばった顔。顔色は白く、身体はやせ型。日頃、肌荒れや花粉症、ぜんそくで悩む人が多い。清潔好きで物静かだが、いざとなったら積極的。ふっとしたことで憂いを感じ悲しくなる。多くは辛いものが好き。 | 頭は大きく、顔のほりが深い。顔色は黒味がかっていて、下腹がぷっくりでている人が多い。日頃、虫歯や難聴、腰痛に悩む人が多い。知的だが怖がり。多くは塩辛いものが好き。 |
いかがでしたか。ご自分がどの体質に該当するかお判りになりましたか?例えば、表1で寒性体質に近い、更に表2では肝の弱り体質にほぼ一致した場合、“寒性体質で肝虚症体質”となります。では下記の1〜15に当てはまる項がありましたら、それをクリックして下さい。貴方が食する最適な食品がお判りいただけます。主にそれらの食品を調理して食すると健康維持に役立ちます。